もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
「ワイアットにはくれぐれも注意してくれ」
今までの楽しげな雰囲気から一転、笑みを消し突然真剣な口調で話され背筋を伸ばす。
自室にマリーが入った話は、本当のところどうでも良かったのだろう。本題を話される緊張感が伝わってくる。
「彼はどういった人物なのですか?」
城を自由に出歩いていたから、客人ではない。そもそも軍服も色は違ったが、エリックと同じ形でユラニス王国の騎士が着るものだった。
エリックは険しい顔をさせ、ユラニスの王族間で起こっている摩擦について、かいつまんで話し始めた。
「王国内には、少なからず戦争を良しとする勢力がある。ワイアットはそちらの考えだ」
「戦争がいいだなんて……」
「力こそ正義だという考えや、争いで生じる産業もある。武器商人たちがそうだ」
武器を持たなくてもいい世の中になるのを望んでいても、それを生業にして生きている人々はどうするのか。そんな問題が潜んでいるのだとマリーは考えてもみなかった。
「俺もこんな体にならなければ、そちら側だったかもしれない」
ポツリとそう言われると、悲しくなる。平和的解決に導いた王子であるエリックは、自身に起きた不幸によって、そうせざるを得なかっただけなのか。