男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 トクトクと鼓動が駆け足を始め、手首にも熱が集まってくる。彼の手は私の手首を悠に回ってなお指が余っていた。その大きさと逞しさを意識してしまえば、体温が上がってくるのを感じた。
 さらに初めこそグイグイと私の手を引っ張るように進んでいたサイラス様だが、途中で歩みのペースを落とし、私に歩幅を合わせてくれているのに気づく。
 サイラス様とふたり肩を並べて回廊を進みながら、かつてない胸のときめきを自覚していた――。


 早いもので、私が宮廷にやって来て一カ月が経った。従者の勤務もすっかり板につき、宮廷内での顔見知りも増え、行動範囲もずいぶんと広がっていた。
 そんな、ある日の昼下がり。私はサイラス様の居室から中庭に続く階段テラスに座り、柔らかな日差しを浴びながら束の間の休息を楽しんでいた。ここは両手の数ほどの人数しか通行が許可されていないこともあり、これまで誰かと鉢合わせしたことはない。そんな油断もあって、私は直接石畳の階段にお尻を下ろし、すっかり寛いでしまっていた。
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