男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 意図せず奥から感じのよい返事があった。
「すみません、お待たせしました。どういった御用かしら?」
 少しして現れたのは、草臥れた簡素なドレスに前掛けのエプロンを付けた下働きと思しき初老の婦人だった。
「後宮統括官様にお尋ねしたいことがあって来たのですが、おられますでしょうか?」
「私が後宮統括官のサリーよ、一体なにかしら?」
「これは失礼しました。後宮統括官様とは露知らず、ご無礼いたしました。私はサイラス様付きの従者のセリウスと申します」
 下働きと思っていた女性からまさかの名乗りを受けて、私は直角に腰を折って礼を取った。
「ふふふっ、統括官だなんて名前ばっかり。実体は後宮内の掃除から修繕まで熟す、なんでも屋さんよ。だからそんなに畏まることはないの。立ち話もなんだから、お話は中で伺いましょう。さぁセリウス様、お入りになって」
 サリー様は朗らかに笑み、私を後宮内へと招き入れた。
「セリウス様、こちらで少しだけお待ちくださいませ」
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