男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 私は常々、業務を中断しても食事はきちんととるように彼から言われていた。特にここ数日は、これまで以上に口を酸っぱくして同様の台詞を繰り返されており、ここで『業務が忙しかった』は言い訳にならない。
「それでしたら、確認事項が生じ、私が午前中に後宮を尋ねていったこともご存知かと。実はそちらでお茶をご馳走になってしまい、昼の時間になってもお腹が減りませんでした」
「お茶の一杯で昼飯が入らんなど、そんな馬鹿なことがあるか。……ドクトール、入ってくれ。診察を頼む」
「失礼いたします」
 これまで静かに私たちのやり取りを見守っていた宮廷医のドクトール様は、サイラス様の声を受けて室内にスッと足を踏み入れた。ドクトール様が入室すると、サイラス様は自らの手でしっかりと扉の鍵を閉めた。
 就寝前ならいざ知らず、日中の時間……それも、随行者のドクトール様がいる状況でされたその行動は、私の目に少し異質に映った。
 なんとなく、嫌な予感がした。
「あ、あの……」
 ドクトール様は穏やかな笑みをたたえ、私の前までやって来る。
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