男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 サイラス様の話し出しを割って口を開いた。問いかけながら、段々と目の前の景色が滲みだす。
 ウィルソン卿の一件だけじゃない。立ち退きの前日に、計ったようなタイミングで寄越された従者の打診。示された通常ではあり得ない破格の支度金に、給金の前払いといった特例の措置。
 私の中ですべての点が、一本の線になって結ばれていく。
「ああ、そうだ。四年前、セリウスの言葉が気になって調べさせた。そして其方らの置かれた状況を知り、俺がウィルソン卿に学習指導を託した。卿から聞き、其方ら姉弟の近況もおおよそ把握していた」
 耳にして、意図せず眦から涙がこぼれていた。
 この時の私の心を言い表すことは難しい。
 私はこれまで困窮する暮らしの中で、セリウスを守ろうと我武者羅に走り抜けてきた。その中には、ひとりの肩に担うには重く難しい選択を迫られる場面が幾つもあった。家財を手放すタイミング、ウィルソン卿から学習指導を受ける決断も、サイラス様からセリウスへの従者の打診にしてもそうだ。
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