男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 当時の私はその度に、身を切るような思いで判断を下し、セリウスとふたり生きる道を切り拓いてきた……。少なくとも、そのつもりだった。だけど、それらはすべてサイラス様の手のうちでのことだった……。
 張り詰めた糸が、プツリと切れてしまったような不思議な虚無感が私を襲った。
 抗えぬ不快な熱が食道を逆流するように上り、嘔吐きそうになるのを寸前で堪える。ここ最近は常に悩まされている胸のむかつき。それが今は、耐えがたい吐き気を伴って私の心と体を追い込む。
 良くも悪くも、心と体は共鳴する。体調不良が私の心を波立たせ、大時化みたいに荒れさせていた。
「あなたの本質は、どこまでもお優しい。……そんなあなたにとって、きっと私たちは血だらけで震える小さなニーナと同じなのですね」
 気づいた時には、普段なら決して選ばないような言葉が、理性の防波堤を乗り越えて口を衝いて出ていた。
「どういう意味だ?」
 こんなのは私の勝手な八つ当たりだ。サイラス様に感謝こそすれ、こんな憎まれ口を叩く権利はない。慎むべきだ。
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