男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 サイラス様は激情のまま酷い言葉を投げつけた私を責めようとはせず、優しい手つきで何度も私の背中を撫でてくれる。彼の優しさに触れ、またじんわりと新しい涙が溢れだした。
 私は彼に、先の言葉は本心ではないと言った。だけどひとつ、本音で語った言葉がある。
 ……優しいのだ。月明りの下で猛々しい熱情をぶつけ、私を翻弄する夜の彼も。絶対王者として華麗な采配を揮いながら、従者として至らぬ私を的確に導く度量を見せる昼の彼も。いつだって根底には、私への溢れるほどの優しさがある。
 サイラス様という人は深い懐でありのままの私を肯定し、絶対的な安心感で私を柔らかに包み込む。見せかけや上っ面の甘言じゃない。彼はどこまでも誠実に、私を正面から受け取めてくれる。それは、彼の優しさに他ならない。
 それから、どれくらい経っただろう。サイラス様の懐に頭を預け、刻む鼓動のリズムを聞いていたら、いつしか涙は止まっていた。
 私は「もう大丈夫」の意思表示にサイラス様の肩をトンッとひとつ叩き、彼の胸からそっと顔を上げた。
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