男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 母が離宮に移ったのは、最後に残っていた第四王子が死んだ直後。俺が十八の時だ。
 俺が宮廷に呼び戻されるのと入れ替わりで、母は追われるようにひとりひっそりと出て行った。
 若くして俺を生んだ母は、当時まだ三十代の半ば。今の俺と変わらぬくらいの年齢だ。そこからずっと、母は訪ねてくる者もなく、ずっと離宮でひとりだった……。
「ありがとう、サイラス。もしかすると陛下は、高齢によってまともな判断力を欠いてしまっていたのかもしれないけれど、今となってはもう本当のところは分からないわ。だけどね、私には皇子たちの弔いとは別に、負い目もあるの」
「負い目?」
「……愛してあげられたらよかった。始まりは契約でも、縁あって夫婦になったんだもの。愛を育もうと私がもっと歩み寄っていたら、また違う結果もあったかしらって」
 耳にして、目の前の母の輪郭が僅かに滲んだ。
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