虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
 髪飾りにはめ込まれた石の色は新緑。この色ならば、一般的には風に関係する力が発現するはずだ。

 しかしアルトリシアはその考え方をいったん横に置いてみた。

 ルブの手のぬくもりを感じながら目を閉じる。

 ――出来損ないの自分を導こうとするふたりに応えたい。

(メルニエラみたいに、すごくなくてもいい。私にもなにかができるんだって思えるようなちっちゃいことでもいいから)

 下腹部の奥がじんわり熱くなったような錯覚に陥る。徐々にアルトリシアの体内を湧き上がった熱は、手のひらの中にある髪飾りへ流れ込んでいった。

「……あ」

 じっと自分の手を眺めていたアルトリシアが声を上げる。

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