生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
小鳥が囀る穏やかな森の片隅に、ハルル・スチュアート(3歳女の子)は佇んでいた。

森とは言っても、少女が住む邸宅の裏にある危険は少ないと言われる開かれた森。

少女は、木々の隙間から差し込む光が指し示す、森の一画に置かれた石製の人形らしき物体を見つめて固まっていた。

“これって・・・狛犬?”

“ううん。・・・似ているけど違うわ。なんだろう、これはデジャビュ?”

首をかしげるハルルの脳裏に、幼いハルルが知るはずもない記憶と知識の渦が、津波のように脳内に押し寄せてきていた。

混乱するハルルは、訳も分からずただ動けなくなっていただけだが、周囲には石像に釘付けになっているように見えたのだろう。

「どうしたの?ハルル。何かあった?」

まさに"狛犬"のように立ち尽くすハルルを見つけて、兄のミシェル・スチュアート(5歳)が心配そうに駆け寄ってきた。

ミシェルの声にゆっくりと振り返ったハルルの身体は、ミッシェルが近づく前に斜めに傾く。

慌ててそれを支えようと、巻き込まれ仰向けに倒れる哀れなミッシェル。

「ハルル・・・!」

倒れ込むハルルを支えようと躍起になっているミシェルを尻目に

゛これって転生なの・・・?”

と、ハルルは突拍子もない考えに囚われていた。

しかし、それが事実なら、ハルルの小さな脳みそにはキャパオーバーな案件。

だが、ラノベならベタすぎるテンプレ覚醒という笑えない事実が、一瞬でハルルを現実に引き戻した。

たった3年しか生きていない今世のハルル。

されど、25年、日本人として生きた波瑠の記憶を持つ少女は、ある意味、勝者とも言えるのではないか・・・。

「チート・・・」

自分が押し倒した形で地面に寝そべることになった兄ミシェルの美しい顔を見つめながら、ハルルはそんな言葉を呟いていた。

※チートとは、ずるいとか、いかさまとか言う意味です。
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