俺の大切な人〜また逢うその日まで〜
それからは何もかもが早かった。
お通夜に葬式。全てが淡々と終わっていった。
お通夜でも葬式でも俺は涙ひとつ流すことが出来なかった。
まだどこかに華がいて、
ひょっこり顔を出しながら
「事故っちゃった。」って苦笑いしながら言ってくれるんじゃないかって。
そんな事を考えていた。

シーンと静まり返った部屋に1人。
あれからずっとカーテンが閉まっている。
カーテンを開けたら、いつも通り華がいる。
もし今、開けてしまったらいつも通りの日常がなくなってしまうのではないか。そう思った。でもまだ華が居なくなったなんて信じていなくて、
抜け殻みたいになってた。
母さんが部屋に入ってきて、そんな俺を見て言った、

「いつまでそうしてるつもり?カーテンぐらいは開けなさい。暗い空気になるでしょう。」
そう言ってカーテンを開けた。
でもそこには華が居ない。

「なー。母さん。華はどこだよ。なーなんで....どーして華が。」そこでやっと俺は華が消えた現実を少し信じた。そして自然と涙が出てきた。
「渉。華ちゃんはもう....」
母さんが泣いていた。
滅多に泣かない母さんさえも泣いていた。
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