溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「さっき自己紹介で奥さんがいるって言ったけど、俺たち夫婦は子どもを持つ気がなくてね。その意思を父さんと母さんについ最近宣言したら、ふたりともショック受けちゃって」

 玄心は苦笑しながら、グラスに入った琥珀色の紹興酒に口を付けた。

 今日の食事会には仕事で来られなかったが、玄心の妻は弟と同い年で、実家が近所ということもあり、俺も含め幼馴染の関係だ。

 成長するにつれ、四つも年上の俺だけは自然と距離ができたが、実の弟の玄心だけでなく、妻の方も妹のように大切な存在である。ふたりが結婚すると聞いた時は無条件にうれしく、心から祝福した。

 だから結婚直後、『兄貴にだけは言っておくけど、俺たち子どもを作るつもりはないんだ』と玄心から打ち明けられた時、俺は少なからず驚いた。

 もちろん、そういう選択をする夫婦がいるのは知っているし、否定するつもりもない。

 だが、弟と彼女は端から見ていて微笑ましくなるくらい仲睦まじいので、彼らが子どもを授かりさらに賑やかな家庭を築いていく未来を、なんの疑いもなく思い描いていたのだ。

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