溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
彼も承知の通り、今の私に子作りはできない。
それでも、彼と寄り添って眠りたいのだ。ひと晩中、彼の体温を感じたいのだ。
「ああ、わかった。明日は一緒のベッドで眠ろう」
拒否されたらどうしようと思っていたけれど、維心さんはあっさり承知してくれた。
私が病み上がりだから、気を遣ってくれたのかな。ついそんなネガティブな思いにとらわれて、小さく首を横に振る。
理由なんてどうだっていい。明日は、思い切り維心さんとの時間を楽しもう。
心の中に巣くう不安に蓋をして、ついでに〝美久さん〟についての記憶にも蓋をして。私は彼との初めての旅行に期待し高鳴る胸の音だけに、耳を澄ませようと決めた。
翌日、朝早くに家を出た私たちは、昼前に軽井沢に到着した。
彼の別荘は、店が建ち並ぶ賑やかな軽井沢の街並みを抜けた先の、静かな森の中にあった。
えんじ色の屋根に、落ち着いた色味のレンガを使った外壁、二階にはお洒落な形の出窓のある、ヨーロピアン調の建物だ。
車窓から建物を眺めていると、維心さんが広々とした草原の脇、砂利が敷かれたスペースに車を停める。
私はすぐにドアから外に出て、長いドライブで固まった体をほぐすように大きく伸びをした。