溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 澄んだ空気は心地よい冷たさだ。風が吹くたびに周囲の木立が枝をサラサラ揺らし、木漏れ日の角度が変わる。

 東京では聞いたことのない鳥や虫の鳴き声、近くを流れる小川のせせらぎも聞こえる。

「ここに立っているだけで、体の内側から綺麗になっていくみたいですね」
「気に入ってくれたようでよかった。とりあえず、中へ入ろう」

 車のトランクを開けた彼から、自分のキャリーケースを受け取る。維心さんはそれよりひと回り大きなキャリーケースを引き、私を先導した。

 玄関の鍵を開けた彼に続いて中に入ると、新築物件のような胸のすく木の香りがした。

 目の前には二階へ続く階段と、その奥にいくつかのドアが見える。

「寝室は二階だ。ふたつある部屋の、広い方。荷物は俺が運んでおくから、リビングで寛ぐといい。そのドアの向こうだ」
「すみません、お願いします」

 お言葉に甘えて、示されたドアの中へ入る。そこは広いLDKで、クラシックで高級感のある家具ばかりが置かれていた。

 飴色の木製テーブルや飾り棚、背面や脚に彫刻の施された、花柄のカウチソファとお揃いのオットマン、猫足のダイニングセット。頭上のシャンデリアもゴージャスで、まるで宮廷の一室にいるよう。

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