溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 思わずドキッとして、パンを咀嚼する彼の顔をまじまじと見てしまう。カレーパンの油で唇がてらてら光っているのが、なんとも野性的で色っぽい。

 対照的に、紙ナプキンで口元を拭う所作には、育ちの良さと品がある。悔しいけれど結局、私はどんな維心さんでもカッコよく見えてしまうのだ。

 恋愛特有の甘い敗北感に苛まれつつ、もさもさと大きなカレーパンを口に運ぶ。

「ホントだ、美味しい」
「こっちも悪くないぞ、クルミとクリームチーズ」

 維心さんはもうひとつのパンを齧ってそう言うと、そのままパクパクと食べ進め、ちょうど半分くらいになったところで、食べかけを私の口もとに差し出した。

「えっ?」
「悠里の分。手でちぎったらうまく半分にできないって、きみがさっき証明しただろ」
「あ、ありがとうございます」

 慌てて受け取ろうとしたら、その手はスルーされて、パンをギュッと口に押しつけられた。

 彼の手から直接食べるなんて。しかも維心さんの食べかけをそのままなんて。

 いつもはそれ以上に恥ずかしいことをしているのに、なぜかこんな間接キス程度で照れくさい。

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