溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
順番が近づく前にバッグから財布を出して、お賽銭を握る。次第に列が進み、ふたりで本殿の前に立った。
お賽銭を入れ、深く一礼、それから二回拍手。目を閉じ、私の願い事を神様に伝え、最後にまた礼をした。
手を繋いで参道を引き返す道すがら、私は彼が宣言通りに子宝祈願をしたのかどうか気になった。なぜなら私自身が、別の願い事をしたからだ。
しかしそのことは隠したまま、軽い調子で彼に尋ねる。
「維心さん、ちゃんと子宝祈願しましたか?」
「ん? それは、悠里次第だな」
「私次第?」
どういう意味だろう。
怪訝な目で彼を見上げると、維心さんは少し照れくさそうに笑った。
「お参りの時、先に両手を合わせて目を閉じたきみの横顔があまりに真剣だったから、俺はこう願ったんだ。〝悠里の願いが叶いますように〟って」
「え……?」
「子宝祈願でも、そうでなくても。俺の分まで願いが上乗せされてるんだ。神様もきっと聞き届けてくれる」