溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
穏やかな微笑みでそう言った彼に、私は笑顔も感謝の言葉も返すことができなかった。
だって私は、子宝祈願をしていないどころか、『維心さんに愛されますように』と、自分本位に願っただけだ。
そこに彼の願いをプラスしたとしても、きっと神様は困るだろう。この男にその気がないのに、叶えられるはずないだろうって。
「まだ時間がありそうだな。一度別荘に車を取りに行くか。ドライブしながら滝に向かって、どこかで夕食を食べて帰ろう。帰ってからのお楽しみも用意してあるんだ。……悠里? 疲れたか?」
鳥居を出たところで維心さんが足を止め、俯きがちに歩いていた私の顔を覗く。我に返った私はパッと顔を上げ、無理やり口角を上げた。
旅行の間は鬱々しない。自分で決めたことだ。夕食はなにを食べるのかな。帰ってからのお楽しみってなんだろう。
ワクワクするでしょ? もっと笑え。はしゃげ、悠里。
「まだまだ全然疲れてません。そうだ、別荘まで走りましょうか、よーいどんで」
「ちょっ……と待て。いくら何でも、十も若いきみに勝てる気は」
「よーい、どん!」