溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「気にしないでください。でも、ベッドはやっぱり別々にしましょう? 生理痛の時は、ひとりの方が気楽なので」
「……ああ、悠里の体が第一だ。きみがゆっくり休める方にしてくれて構わない」
「ありがとうございます。じゃ、すみませんが片付けお願いします」
早口で言って、タタッと別荘の玄関へ走る。もどかしく靴を脱いで、階段を上がって、寝室から荷物を引っ張ってくると、隣のゲストルームに飛び込んで鍵をかけた。
ようやく気が緩んだ私は、ドアに背をもたれながらずるずると床に崩れ落ちた。
泣いたら余計に惨めになるから泣きたくない。そう思うのに、両目から大量の涙がだらだらとこぼれる。
お願いだから、美久さんに会わないで。あなたは私の夫でしょう?
一般的な夫婦なら当然認められるであろうそんな主張は、私たちの間には通用しない。
維心さんが外でなにをしようと、私は家で彼の帰りを待ち、求められたら体を差し出し、子作りに応じる。
そしていつの日か妊娠したら、私個人の価値なんてきっとなくなって、今度は桐ケ谷家の跡継ぎを育てるマシーンと化すのだ。
そういう結婚を選んだのは自分自身だ。
ただ、維心さんのそばにいたいがために。