溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
維心さんは元気そうな私の姿に安堵した様子で、私の方こそ演技だとバレずに済んでホッとした。
正直、笑顔を作るのは大変な労力だし、気を抜くと目の奥に熱いものがこみ上げる。
それでも今日一日を耐え抜けば、明日からは会社が始まる。仕事をしていれば少し気も紛れるだろう。
頑張れ。頑張れ。そう自分を鼓舞しながら、二日目の観光に出かける。
その日は大型ショッピングモールを訪れて、維心さんの服を身立てたり会社用のお土産をふたりで相談しながら選んだりした。
胸が軋む音は知らんぷりをして、笑顔の仮面を貼り付けて。
そんな努力の甲斐もあって、私は彼に旅行を楽しんでいると思わせることに成功したまま、東京に帰ってきたのだった。
日頃から多忙な維心さんは、お盆休み中も私の看病や旅行で忙しなかったせいか、帰宅してシャワーを浴びるとソファで眠ってしまった。
私の力で体の大きな彼をベッドまで運ぶのはさすがに無理なので、そのまま寝かせてあげるしかない。
維心さんの体をタオルケットで覆うと、私は彼のそばにしゃがむ。そして、目を閉じていても気品のある、彫刻のように整った顔立ちをじっと眺めた。