溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
あんなことがあった後なのに、見つめているだけでこの人が愛おしい。私はどうしたらあなたのことが嫌いになれるんだろう。
昨日からずっと頭の中をぐるぐる回っているその問いに、まだ答えは出ない。
「おやすみなさい、維心さん」
かすかな声で呟き、彼の唇にキスを落とした。そっと唇を離した瞬間、彼の頬にぽたりと透明な滴が落ちて、自分が泣いていることに気づく。
慌ててその滴を拭って立ち上がり、私は部屋の照明を消した。
「早坂、ここ数字が違ってるぞ」
「す、すみません……! すぐに直します!」
お盆休みが明け待ち望んでいた平日がやってきたが、私は不調だった。課長から受け取った書類を手に、そそくさと自分のデスクに戻る。
今日は朝からつまらないミスが多く、そんな自分が情けない。
家では引き続き、維心さんと普通に接している。
私がまだ生理中なのでもちろん夫婦生活はないけれど、今の精神状態ではそれがちょうどいい感じだ。
気を取り直してパソコンに向かい、注意深く書類の修正をする。再度課長に提出して判をもらい、また別の事務作業に取り掛かる。