溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「いいんですか? こんな素敵なスリッパ履いちゃって」
「ああ。それは元々きみ用だ」

 私の? 今日の下見のために、わざわざ用意してくれたってこと? 自分とお揃いのスリッパを?

 頭の中に疑問符をたくさん浮かべてぽかんとする私に構わず、部長はさっさとスリッパに履き替えて、廊下に上がる。

「あ、待ってください!」

 私も慌ててスリッパを履き、彼の広い背中を追って、廊下の突き当たりを右に曲がった先にある部屋へ移動した。

 室内に入ってすぐ、部長が壁に取り付けられたスイッチを押す。電気をつけたのかと思ったけれど、部屋は暗いまま。

 不思議に思っていると前方のカーテンがゆっくりと両側に開き、隠れていた巨大な窓と、その向こうに広がる東京湾の夜景を見せてくれた。

「すごい……」

 日没直後なのでまだ少し空は明るいが、その景色は圧巻だった。

 吸い寄せられるように窓に近づいた私は、規則正しく並んだビルの小さな窓から漏れる明かりや、レインボーブリッジの華やかな明かり、それらに照らされてゆらゆらと光る東京湾の水面にうっとり目を奪われる。

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