溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「気に入った?」
ゆったりした足取りで近づいてきた部長が、隣に並んで私を見下ろす。
「もちろんです。夜の東京湾がこんなに綺麗だって、知りませんでした」
「それならよかった。じゃあ、ここで俺と一緒に生活できるな?」
「えっ?」
……今、部長はなんて? 一緒に生活って聞こえた気がするんだけど、空耳?
瞬きを繰り返して彼を見つめていると、部長はスーツの内ポケットに手を入れ、小さな箱を取り出す。
光沢のあるベルベット素材の……まるで、リングケースのような。
私がそう思いつくのと同時に、彼が箱のふたを開ける。現れたのはダイヤの指輪で、ある意味予想通りだけれど、根本的な部分がまったく理解できない。
「早坂悠里さん。結婚しよう、俺と」
これはなんのドッキリなんだろう。それとも私、立ったまま夢を見ているの?
目の前には、オモチャなのではと疑いたくなるほどに大きなダイヤのついた指輪。そして、ずっと思いを寄せてきた憧れの上司。
その彼に真剣な眼差しで見つめられ、甘い声音でプロポーズの言葉を囁かれ。こんなお城みたいなマンションで、一緒に生活しようだなんて。