溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「わかった。かけてみる」
「うん。頑張って!」
スマホの時計は、現在七時半。もしも美久さんと一緒にいたとしても、この時間ならただ食事をしてるだけだよね……?
祈るような気持で維心さんの番号に掛け、スマホを耳にあてる。
呼び出し音と同じくらい、自分の鼓動音が大きくてうるさい。
『悠里、どうした?』
五コールほどで、維心さんは電話に出た。無視されなかったことに、とりあえず安堵する。
「維心さん、ごめんなさい急に」
『いや、気にするな。なにかあったか?』
「いえ、その……」
電話をすると意気込んだはいいけれど、適当な口実を考えるのを忘れていた。慌てる私を見かねて、佳代が走り書きのメモを見せてくる。
【声が聴きたかった!】
ええっ!? そんな恥ずかしいセリフレベル高いよ……。
つい躊躇するが、それ以外の口実も思い浮かばない。私はテーブルの上のチューハイをひと口飲んで、蚊の鳴くような声で告げる。
「こ、声が……聴きたかったんです。維心さんの」