溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 電話の向こうが、しんとする。やばい、引かれたかもしれない……。泣きそうになりながら、再びチューハイに逃げようとしたその時。

『俺もだ。昨夜も接待で遅くならなければ、きみに電話するつもりだった』
「えっ……?」

 予想外のセリフが耳に飛び込み、アルコールの効果も相まって、ぽわんと頬が熱くなる。

『それに、もう一週間禁欲しているだろう? いい加減、悠里が足りなくてつらいよ』

 切なげで、甘い声音。言葉尻には、もどかしげな吐息も交じっていた。

 今、美久さんと会っている最中だとして、電話のために彼女のそばを離れたとしても、こんなセリフを吐くだろうか。

 単に、どちらにもいい顔をしているだけ? 維心さんって、そんな器用な人だった?

「私も、です」

 浮気を暴露するどころか、うっかりきゅんとさせられて、本音をこぼしてしまった。

 恥ずかしいので缶チューハイを補給し、トロンと酔いながら彼の返事を待つ。

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