溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
部長は怪訝そうな、それでいて少し傷ついているようにも見える瞳で私を見つめる。
私のせい……? でも、こっちだって心の中がぐちゃぐちゃだよ。
「ご、ごめんなさい。そんなにすぐ、お返事できるお話じゃないので」
「早坂……」
「ごめんなさい!」
彼の目を見ずにぺこりと頭を下げ、暗い部屋を玄関に向かって引き返す。
部長が追いかけて来る気配はなくホッとしたけれど、ひとりになると急にちくちくと胸が痛んだ。
好きな人からのプロポーズなのに、断っちゃった……。
だって、本当にわけがわからなかったんだもの。私と彼は十歳も年が離れているし、上司と部下だし、住む世界も違うし、今までに彼から好かれていると思ったこともない。
なのに、なんでいきなり……。
考えても考えてもそれらしい答えは見つからず、私はとぼとぼとマンションを後にした。