溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

『じゃ、俺と結婚して親戚になっちゃえば、たまに会えるしそれでよくない? 大丈夫、兄貴ならずっと独身だよ』

 そう玄心に言われるがまま、ふたりは結婚を決めた。けれど、子どもだけは作らないようにしよう。そう、話し合って決めたのだそうだ。

 ふたりはそんな夫婦関係を俺に悟られないよう、必死で取り繕った結婚生活を送ってきた。

 そのうち穏やかな日々が心地よいものになっていき、美久も玄心と本当の夫婦になれるかもと思い始めていた矢先――俺が、悠里と結婚した。

『食事会の日、本当は仕事でもなんでもなかった。だけど、どうしても、平気な顔で維心くんの結婚相手の顔を見られそうになかった。だから、玄心に頼んで欠席させてもらったの』
『そう、だったのか……』

 美久の告白に、俺はただただ呆然とする。

 あの日の玄心は、いつものように終始笑顔で、俺と悠里、そして両親の会話を繋ぎ、場を盛り上げてくれていた。自分の複雑な胸中など、微塵も感じさせずに。

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