溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
こうして離れてみると、改めて私は職場に恵まれていたなと思う。
今は赤ちゃんのことが最優先だけれど、いつかきっと復帰して、またみんなの役に立ちたい。今、私のいなくなった穴をフォローしてくれている誰かを、今度は私が助けたい。
「あの」
その時、不意に声をあげたのは佳代だ。私のベッドを挟んで課長たちと向かうように立っていた彼女は、まっすぐに元木くんを見ている。
「えっと……俺?」
「そうです。あなたです。柴犬の」
……柴犬?
なんとなく不穏な気配を感じながらも、佳代の様子を見守る。
すると我慢ができなくなったようにタタッとベッドの向こうに回り、怪訝な顔で固まっている元木くんのもとに近づくと、いきなりその手を握って跪いた。
「あの、私とお付き合いしていただけませんか?」
「えっ? ちょっと佳代?」
初対面でいきなりなにを言っているのだろう。
元木くんは彼女に手を握られたまま、絶句している。