溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 指折り数えて話していたら、維心さんがなぜか険しい顔になる。

「元木か……アイツはまだ悠里に未練が?」
「いえ、そういうんじゃなくて、普通に同僚としてお見舞いに。しかも、その場で佳代とカップルになったんですよ!」

 ほくほくしながらそう話した私に、維心さんはほっとしたように息をついた。

「それならいいが。アイツには心乱された記憶しかないから、未だに意識してしまってな。ずいぶん前の話だが、会社で悠里との結婚を発表した日の帰り、エレベーターに乗ろうとするきみと元木とすれ違ったことがあっただろう。まさかふたりで一緒に帰るのかと気になって、俺も急いで地下の駐車場まで下りたんだ。エレベーターがなかなか来なくて階段を使ったから、息が切れたよ」
「えっ……」

 そのことなら私も覚えている。営業部に戻ったはずの維心さんが車で駐車場から出てきて、その早業に驚いたんだ。

 ……まさか、階段を使ってまで急いでいたなんて。

「美久とホテルで会っていた時もそう。美久との話が済んで、ふとラウンジの外を見たら、悠里がいるではないか。しかも、元木に肩を抱かれて。ヤツがきみをホテルの部屋にでも連れ込む気なんじゃと思って、慌てて追いかけたんだ。まぁそのおかげで、きみに愛してると伝えられたわけだが」
「そうだったんですね」

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