溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 私、こんなにヨレヨレで出産ができるのかな……?

 その日の夕方、一抹の不安を覚えながら、壁の手すりを頼りにトイレから病室へ向かっていた途中のことだった。

 ――パシャッ。足元で突然、水風船が割れたような音がした。続けて、足の間をとめどなく透明の液体が流れる。

「えっ?」

 呆気に取られている間に、私の足元には小さな水たまりができていた。私、とうとう尿を我慢する力もなくなったの? 今、トイレに行ってきたところなのに?

 呆然と立ち尽くす私に、偶然通りかかった看護師が慌てて駆け寄ってきた。私を担当してくれている女性看護師だ。

「桐ケ谷さん、これ、破水です。先生の所に行きましょう。もしかしたらそのまま産むことになるかも」
「えっ? 産む?」

 混乱している間に車椅子が用意され、医師のもとへ連れて行かれる。

 その途中でいつかも感じたような下腹部の痛みがやってきて、それに耐えながら内診を受けたら、子宮口は七センチまで開いていて、お腹が痛いのは陣痛ですときっぱり断言された。

 赤ちゃんの推定体重は、低出生体重児になるかどうかちょうど境目の二千五百グラム。

 これなら産んでしまいましょうと、車椅子で今度は陣痛室へ移動した。

< 233 / 240 >

この作品をシェア

pagetop