溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「ぶ、部長……!」
「重そうだな。半分貸してみろ」
私が口をパクパクさせている間に、部長は私の手からファイルを何冊か適当に取って、資料室のドアを開けてくれる。
「すみません、ありがとうございます……」
我に返った私が室内に入ると、続いて入ってきた彼の後ろで、ドアが静かに締まった。
壁のスイッチで電気をつけても少し薄暗い、背の高い書架が整然と並んだ資料室で、部長とふたりきりになる。
ファイルを抱いた胸が高鳴る鼓動に合わせて上下し、頬が勝手に熱を持つ。
会いたい、話したいと思っていたけれど、こんな狭い部屋でふたりきりになると、緊張してなにも言葉が出てこない。
「昨日のことだが」
無言で書架にファイルを戻していると、部長が口火を切った。
瞬時にドキッと心臓が鳴り、少し離れた場所で同じ作業していた彼の横顔が、ゆっくりこちらを向く。
「きみはすぐには返事ができないと言ったが、その後、答えは出たか?」