溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 言うのよ、悠里。彼の方から聞いてくれるなんて、願ったり叶ったりじゃない。

 私はごくりと唾を飲み、まっすぐ彼の方に向いて口を開く。

「はい。決めました。……私、部長と結婚します」

 私の返事を聞いた部長は、なぜか目を閉じて黙り込む。そして、静かに深呼吸をしたかと思うと、目元を緩めて微笑んだ。

「ありがとう。いつ引っ越してこれる?」
「えっ? と……すみません、そういう現実的な話はまだまったく考えていなくて」
「ああ、そうだよな、ごめん。早くきみと一緒に暮らしたくて、焦ってしまった」

 少しはにかんで頭を掻いた部長に、つい胸がときめいてしまいそうになるが、早まってはいけない。

 彼の目的は子作りかもしれないのだ。早く一緒に暮らしたいというのは、一刻も早く跡継ぎを残さなければという、ただの義務感かもしれない。

「あの、ひとつ確認なのですが」
「ん?」
「部長は……子どもが欲しいんですよね?」

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