溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
カッと全身が熱くなって、苦しいくらいに胸が早鐘を打った。
おそるおそる顔を上げると、熱を孕んだ維心さんの瞳に見つめられる。断るなんて選択肢を、私の中から奪うように。
やがて信号が青に変わり、維心さんの視線も手も、私から離れていく。たったそれだけのことが切なくて、名残惜しい。
……結局、私自身が今夜も彼に触れて欲しいのだ。
そんな自分がひどくふしだらな気がして、私はわざと丁寧な言葉を選んで返事をする。
「はい。謹んで、お相手いたします」
「ありがとう。しかし、こんな話をしていると、今すぐどこかに車を停めてリクライニングを倒して、きみのすべてを奪いたくなるな」
冗談めかした口調ながら、最後にこぼしたため息には甘い成分が含まれている気がして、私は慌てる。
「ダ、ダメですよ?」
「わかっている。家に帰るまでの辛抱……だな」
ハンドルを握る彼が、悩まし気な声音でそう呟く。ダメですとは言ったものの、微妙な会話で気持ちが昂ってしまったのは私も同じ。
くすぶった欲情が体の内を出て、密閉された車内をいつまでも漂っている気がした。