溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
夜のセレクトショップには私と維心さん以外の客はおらず、三十代くらいの上品な女性店員がつきっきりで私のコーディネートをしてくれた。
「お客様、とてもお似合いですよ」
「そうでしょうか……」
試着室を出た私が纏うのは、ラベンダー色の膝丈ワンピース。心地よい肌触りは、シルク素材ならではだ。とても素敵だとは思うけれど、胸もとの切れ込みが深くて、少し大人っぽすぎる気がする。
足元は同系色のパンプスで、普段履かないヒールの高いものなのに、不思議と履き心地はいい。
合わせて選んでもらったクラッチバッグも含め、すべてが有名な海外ブランドのものなので、総額を考えると恐ろしくなった。
「奥様はこちらです」
「ありがとう」
その時、別の店員に連れられてきた維心さんが私のもとにやって来て、無言で全身を観察した。その間少しも笑ってくれないので、お気に召さなかったのかと不安になる。
「あの、変ですか?」
「いや……」
つい自分から感想を求めたら、維心さんはなぜか私からパッと目を逸らす。
やっぱりこんなハイブランドの服、私には着こなせていないんだ……。