溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「暑いだろ、早く」

 ぼうっと立ち尽くす私にしびれを切らしたように降りてきた部長が、助手席のドアを開けてくれる。

 我に返った私は「すみません」と小さく頭を下げ、シートに腰を滑らせた。

 仕事の延長のつもりで来たのに、彼の車に乗せてもらうなんてまるでデートみたい。無意識に心が浮き立つ反面、メイクや服装が変じゃないか心配になる。

 今日の服装は淡いブルーのVネックブラウスにネイビーのフレアスカートという、涼しさ重視のオフィスカジュアルだけれど、もう少し華やかな色の服を着てくればよかった。

 部長を待たせないよう、メイクを直してこなかったのも悔やまれる。

「じゃ、行こうか。ここから車で十五分程度だ」

 そんな私の胸中を知る由もない部長は、私がシートベルトを締めるのを確認し、さっそく車を発進させる。

「物件はどちらにあるんですか」
「湾岸地区に、うちと京極(きょうごく)建設とが共同で再開発に携わった『TOKYOシティハーバー』があるだろう。そこに建っているマンションだ」
「あっ、時々お客様から問い合わせがあるので、資料を見たことがあります。敷地内には保育所や病院、公園にショッピングモールまで揃っている、夢のような水辺の街なんですよね」

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