意地悪な副社長との素直な恋の始め方
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ナツと感動の再会を果たしてから三時間後。
「それにしても、アンタといいナツといい、どーしてまともな恋愛ができないのかしら?」
シゲオは、缶チューハイ一本飲んだだけで、ソファーで寝落ちしてしまったナツとわたしを見比べながら、呆れた様子で溜息を吐いた。
「……返す言葉もございません」
「で、結局、『セフレ』の『元兄』、しかも『御曹司』と復縁したってこと?」
朔哉の想う相手が『異母妹』であるということを除き、包み隠さず話した現在。
シゲオは、朔哉がわたしの元兄で、ゆくゆくは大企業の社長の座を継ぐ身であることも知っている。
「復縁……した、のかな」
「はっきりしないわね」
「その……そういうことは、してないから。朔哉は怪我してるし」
「ヤるかヤらないかが問題じゃないでしょ! 一緒のベッドで寝て、ところかまわずイチャこいたりしてるわけでしょ?」
「と、ところかまわずってわけじゃ……。でもさ、セフレで復縁って、おかしくない?」
「あのねぇ……アンタと朔哉はセフレじゃないから!」
「セフレ、じゃない?」
だったら何なのだ、と見つめるわたしに、シゲオはピスタチオの殻を投げつけてくる。
「鈍いのもここまで来るとイラつくわっ! どっからどう聞いても、意地っ張りな恋人同士でしょうがっ! ただのセフレにアパート世話したり! 就職を斡旋したり! 借金返してあげたり! 暴漢から身を挺して庇ったりなんかしないでしょうがっ! どんだけ善人なのよ。もはや聖人レベルだっつーの!」
が、しかし。
イコール「恋人」とは、ならないんじゃないかと思う。
「でも、いちおう元妹だし?」
「本当に『妹』だと思っているなら、手は出さないでしょ」
「いや、でもさ……」
(異母妹を好きになるくらいだから、あり得るような……)
「でも、じゃねぇんだよ! 一度だけなら過ちだったという言い訳も成立するだろーけど、六年だぞ? そんだけ長い間、ヤリまくっておいて過ちも気の迷いも魔が差したもねーだろうが。完全に、確信犯だ。しかも、偲月が『妹』キャラ? それこそないわな」
すっかり、ガラの悪い男口調に戻ったシゲオに鼻で笑われムッとする。
「キャラじゃないって……本当に妹だったし」
「偲月の場合、守ってあげたくなるような妹キャラは無理がある。よくて、小悪魔」
「小悪魔……嬉しくないんだけど」
「ひとは、ナイモノねだりする生き物だからねぇ。偲月ちゃんは、見た目を裏切る一途でピュアな女の子よねぇ。はいはい……」
「ちょ、バカにしてるでしょ? シゲオっ!」
「で、ポートフォリオの件なんだけど」
いきなり話を変えられて、怒りの持って行き場がなくなる。
「うっ……や、その、ごめん。中途半端で……」