意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「もしかして偲月ちゃんと喧嘩中か? なーんて、気になっちゃって。偲月ちゃんが迎えに来てくれたら、コイツも素直に謝れるんじゃないかって思って呼んでもらったんだけど……到着を待たずにご覧のとおり。俺、男の膝枕すんの人生初なんだけど」
「…………」
沈黙するわたしから、福山さんは勝手に回答を得る。
「やっぱり喧嘩中だったんだ?」
「喧嘩、ではないですけれど……そんなような……」
「どうせ、朔哉が何かやらかしたんでしょ? もしくは、何もしなかったか。コイツ、素直じゃないのはもともとだけど、偲月ちゃんのこととなると、普段の判断力や決断力はどこへ行ったと訊きたくなるくらい、及び腰で、怖気づくからねぇ」
まるで、これまでずっとそうだったかのような口ぶりに、首を捻る。
(朔哉が、ずっとわたしのことが好きだったように聞こえるけど……)
問い詰めて、はっきりさせたいが、福山さんは膝の上に乗っかっている朔哉の頭を軽く叩いて起こしにかかる。
「朔哉! 起きろ。いとしの偲月ちゃんが来たぞー?」
朔哉はうるさいと言いたげに福山さんの手を振り払い、ゆっくり目を開けた。
「……?」
ぼんやりした表情でこちらを見上げ、呟く。
「……しづき」
「うん?」
わたしが返事をすると、ふわりと笑った。
(な、んて顏するのよぉ……)