意地悪な副社長との素直な恋の始め方



「だから?」

「今回のオファー、デザイナーの意向もあるでしょうけれど、公にする覚悟ができてるから、公私混同と言われるのを承知の上で偲月を指名したんでしょ」

「だけど、プレスリリースでは発表しなかったんだぜ? 偲月との婚約」

「その理由は、今日の会話の中でちゃんと説明してたじゃない」

「え?」
「いつ?」


驚くわたしと流星に、花夜さんが溜息交じりに「ひとから言われてわかるんじゃ、意味がないのよ」と言う。

ほどなくして、広報部のオフィスがある階でエレベーターが停まり、流星は渋々降りた。


「ちっ! こんな中途半端なところで切り上げたくないけど、外出の予定があるんだ。あとで電話するからな? 偲月!」


一人分、軽くなったエレベーターで、花夜さんはわたしを睨み下ろす。


「あのね、偲月。副社長とそういう関係ならそうだって、事前に言いなさいよ! わかっていたら、こっちにもやりようがあったのに。全部向こうのペースに持ってかれるなんて、悔しいじゃないの」

「す、すみません……でも、あの、もう付き合ってはいなくて……朔哉からのオファーだって事前に知ってたら、ちゃんと説明したんですけど」

「でしょうね。それで、行くのも嫌がっただろう、と。そこまで見越して、偲月に気を使わせたくないから、黙って連れて来いなんて言ったのね。あの副社長。まったく、腹黒いったら。あれを手懐けるのは至難の業でしょうけれど、偲月も相当なものだから、まあ、お互い様ね」

「え、や、そんなことは……」

「「ある!」」

「……」


シゲオと花夜さん二人同時に言い切られ、反論するのは諦めた。


「今度こそ、逃げるのはナシよ? 偲月。正攻法で来られたら、アンタも素直になりやすいでしょ? アレコレ考えずに、来た波に乗ってみなさい」

「波に乗るなんて、む」

「無理言うな! あんなイケメンとあんなエッロいキスしておいて、『そんなことできませ~ん!』なんて言い訳、通用するとでも?」


キッとシゲオに睨まれて、首を竦める。


「す、スミマセン」

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