意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「や、ほら、うちの母親って結婚と離婚を繰り返してるでしょ? 何年も続いた相手って、一人もいないし。わたしの父親とも、たぶんそんな感じだったと思うし。いまは別々に暮らしてるから、振り回されることもなく、あんまり思わないけど……。子どもの頃は、どうせすぐ別れるのになんでわざわざ結婚なんて面倒なことするんだろう? って思ってたし。一緒に住むだけ、事実婚でもよくない? 別れることになっても、その方が身軽だし?」
シゲオは驚きに目を見開いたが、何か腑に落ちたのか、独り言のように呟く。
「なるほどね……」
「なるほどって、何が?」
「当然の展開が、ひとによっては当然じゃないってことよ」
「意味わかんないんだけど」
「いいのよ、わからなくても。おバカな偲月に説明しても余計なこと考えそうだし」
「ちょ、」
「着いたぜ!」
わたしたちの数歩先を行く流星が振り返り、話は一旦保留。
雰囲気たっぷりの地下通路の行き止まり、螺旋階段を昇り切った先の小さな部屋を出れば、そこはチャペルの前室だった。
チャペル正面、左右にある塔のうち、右側部分が地下通路への出入り口になっているようだ。
「チャペルは、自然光を多く取り入れられるよう窓を増設、拡張。空調設備も新たにし、床や壁も断熱効果のある素材を採用して、オールシーズン問題なく対応できる」
流星が重厚な焦茶色の扉を押し開けると想像したよりもずっと明るい空間が広がっていた。
おそらく、新郎新婦の希望で柔軟に装飾を変えるためだろう。チャペル内部は素っ気ないほどシンプルな造りだ。
だから余計に、祭壇の奥にある見事なステンドグラスが目を引く。
「ちょっと雰囲気味わおうぜ?」
「え、……」