意地悪な副社長との素直な恋の始め方


抵抗する間もなく、流星に引きずられるようにして、身廊の中央を祭壇へと進む。

自分が結婚するところを具体的に思い描いたことなんてなかったけれど、こうして実際にチャペルを見ると、『Claire』のウエディングドレスを身に纏い、祭壇へ向かう自分を想像するのは、そう難しくない気がした。



――祭壇の前にいるひとを想像するのも。



背が高くて、姿勢がよくて、髪はちょっと長めで。
髪色も、目も、夜の闇のように真っ黒。

待たされて、ちょっとイライラして、普段被っているイケメン紳士の仮面が剝がれかけているかもしれない。

ようやく現れたわたしを振り返り、ちょっと眉を引き上げて、満足そうな表情で傲慢に顎を上げて。
それから、きっと嬉しそうに微笑む――。


そんな朔哉の姿を想像し……虚しくなって首を振る。


(何を想像してるのよ? わたし。いまの状況じゃ、ただの妄想だわ……)


現在のわたしと朔哉の関係は、セフレではなくとも恋人と呼ぶには微妙な関係。

しかもわたしは――本音ではないけれど――彼のことが「大キライ」だと宣言してしまっている。

婚約の話だって、保留というよりは無期延期……いや、立ち消えになったと言ってもいいくらいだ。

クライアントとモデル。
それが、一番はっきりしている関係で、ロマンチックな妄想に浸れる要素なんて、どこにもない。


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