意地悪な副社長との素直な恋の始め方


(ピアス! どこで、どこで落としたの!? 電車……じゃなくて、たぶんここに来るまでの……まさか、あの時……ツツジの中っ!?)


家を出てからここまでの間で、ピアスを落とす可能性があったのは、唯一スマホを捜索した時だけだ。

残った片方も外してしまおうかと思ったけれど、朔哉が気づかないはずがない。

嘘を吐いてごまかせば、バレた時に朔哉を傷つけるだけだ。
正直に言うしかないだろう。


(サイアク……戻って探せば見つかるかも。でも、観覧車……)


鏡で衝撃的な自分の姿を見た時よりもさらに落ち込み、化粧室を出る。

行き交う女性たちの視線を一身に集める朔哉は、回復したわたしの姿を見るなり、軽く頷いた。


「……朔哉、あの」

「どうした? まだ何か問題が?」

「ピアス……落としちゃった、みたいで」

「ピアス? ああ、片方ないな」

「たぶん、ツツジの茂みを探っていた時だと思うんだけど……」

「は? ツツジの茂み?」

「ひととぶつかって、スマホが茂みにダイブしちゃって……」

「失くしたなら、同じものを買えばいい」

「でも、」


買い直して手に入るのは、似たものであって、同じものではない。
口ごもるわたしに、朔哉は別の解決策を提案した。


「夜だし、誰かが拾う可能性は少ないだろう。探せば見つかるかもしれない。場所は?」

「XXX駅の近く。でも、観覧車……」

「二十三時までやっているから、探しに行って戻っても、十分間に合う」

「……うん。ごめん」

「この程度は、想定の範囲内だ」

「え」

「行くぞ」


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