意地悪な副社長との素直な恋の始め方
二日間で二ダースのマカロンを平らげるなんて、着々と母に似てきている気がしなくもないが、つわりが重くて食べられないよりはいいだろう。
「そうか。じゃあ、また買ってく……」
「ダメっ!」
空き箱を冷蔵庫にしまっておく必要性が感じられず、取り出そうとしたら腕を掴まれた。
「ゴミだろ」
「捨てたら、またそこに新しいのが入るでしょ! そしたら、また食べずにはいられなくなるじゃない!」
「言っていることが、さっぱりわからないんだが」
「今度は、三ダース必要になる」
「……だろうな」
「食べすぎなの」
「だろうな」
いきなり立ち上がった偲月が振り返り、ムキになって言い募る。
「でも、お腹がすくと気持ち悪いの! だから、お腹がすくと食べずにはいられないの!」
食べると気持ち悪くなるつわりもあれば、食べないと気持ち悪くなるつわりもあることは、妊娠・出産に関する本を読んで知識としては頭に入っていた。
偲月とは昼間は別行動なので何をしているのかは把握できていなかったが、急激に体重が増加しているようには見えない。神経質になりすぎだ、そう言いかけて、言葉を呑み込んだ。
さっきまで俺の首を絞めんばかりにネクタイを引っ張っていた偲月の目が潤み、その唇が震える。
「た、食べすぎて体重が増えすぎるとっ、赤ちゃんにもよくないしっ、出産にもえ、影響があるって……だから、が、我慢しなきゃいけないって……。本当は、胃に優しいものとかヘルシーなものとか食べるべきだってわかってる。で、もっ、、でもっ、目の前に好きなものがあったら、そっちを優先したくなるからっ、ついっ食べちゃって、食べたあとでものすっごい罪悪感に襲われて、でも、食べたくてっ」