意地悪な副社長との素直な恋の始め方
車が走り出すなり、福山、日村さん、そして不本意ながら流星に『パパ見知りはあったか?』とメッセージを送ってみた。
三人とも子持ち、そして現在子育て中。
同じような経験をしているかもしれないと思ったのだ。
しかし、福山からは『うちはなかったね。俺、在宅勤務だし』、流星からは『ねーな。育休中で、ほぼ俺が世話してるし』との返信。まるで参考にならない。
最後の頼みの綱、俺と同じように家を空けることが多い日村さんの返信は、『あったけど、そうだと気づいたときには終わってた。アハハ』。
(子どもはそれぞれ。子育てにお手本などないとわかっているが……パパ見知りがずっと続いたらどうすればいいんだ?)
いずれ改善されるとわかっていても、もしかしたらもう二度と、千陽に笑いかけてもらえないのではないかと思うと、とてつもない恐怖に襲われる。
専門家のアドバイス、効果的な解決方法などを求め、インターネット上にあふれている情報を探っていると、偲月が身を乗り出すようにして訊いて来た。
「ねえ、朔哉。芽依は元気だった?」
千陽は、泣いたせいで疲れたのか、お気に入りのシュールな表情をしたブタのにぎにぎを半分口にくわえてうつらうつらしている。
「ああ、元気にしていた。当分むこうで働くつもりだが、千陽の顔も見たいし、オヤジに報告することもあるから、近々一時帰国すると言っていた」
「ふうん? ついにダニエルさんとの結婚、決めたんだ?」
偲月は、驚きもせずあっさり言い当てた。
「……いつから知っていたんだ?」
「んー。去年のクリスマス前? ちぃと一緒にビデオ電話したら、ダニエルさんも一緒にいることが度々あって。それで、クリスマスはともかくとして、年末年始も帰国しないって言うから、誰かと一緒に過ごす予定でもあるのかって訊いたら、顔を真っ赤にして、そんな予定はないってミエミエの嘘吐くし。そのくせ、初めての時って痛いの? とか訊いてくるし」
「は? 何て話をしてるんだ……」
「何を驚いているのよ? 朔哉。女子同士の際どいトークは、日常茶飯事。既婚者同士のトークなんてもっとエグいわよ? 夫婦生活の愚痴とか、ダブル不倫の話とか」
シゲオの発言を聞いて思わず偲月を見遣ると、「そんなこと話してないし、していない!」と噛みつかれる。
「……で、偲月は芽依に何て答えたんだ?」
「ダニエルさんは、そういうのに慣れてるみたいだから心配いらないと思うって、言っておいた。芽依は複雑そうな顔してたけどね」
「まあ、ほかの女と……って思うと、モヤモヤするのはしかたないことよねぇ。わたしは、下手なよりは上手い方が断然いいと思うけれど」
「……そういう問題じゃない」