意地悪な副社長との素直な恋の始め方
長年、偲月と曖昧な関係を結んでいた自分には、ダニエルを責める資格はないが、箱入りの芽依をいいように言いくるめてコトに及んだのではないかと思うと腹立たしい。
「朔哉は、反対なの?」
「いや。ダニエルなら、大丈夫だろう」
「お義父さんは、ちがうみたいだけどね?」
「オヤジは、相手が誰であれ気に入らない」
「やっぱり、日本に帰って来てほしいだろうねー。家族が離れて暮らすのは寂しいもんね」
「そうだな。でも、お互い幸せなら問題ないだろ」
「……わたしは、幸せじゃなかったけど」
偲月がぼそっと呟くのに驚いて振り返れば、怒ったような、泣きたいような、何とも言えない顔をしていた。
寂しい思いをさせて申し訳ないという気持ちと同時に、そんな風に恋しがってくれることが嬉しいという気持ちが湧き起こる。
素直になれない妻の素直な告白が愛おしくて、思わずキスしそうになったが、横から伸びてきたシゲオの手に頭を押しやられた。
「どうして邪魔するんだ」
「ひとの車でイチャこいてんじゃないわよ! 自主規制してちょーだい」
「キスくらい、いいじゃん」
「アンタたちねぇ……欲求不満が溜まりまくっているくせに、キスだけで終われるわけ?」
偲月が抗議するも、シゲオに冷たい目を向けられ、敗北を認めた。
「無理だな」
「無理かも」