意地悪な副社長との素直な恋の始め方
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その後、渋滞に巻き込まれることもなく、三十分程度で夕城の実家に到着。
シゲオは、このあと雑誌の取材があるとかで、俺たちを降ろすとそのまま走り去った。
忙しいだろうに、本当にピックアップするためだけに車を出してくれたらしい。
何だかんだ言って世話好きなシゲオは、偲月にとってだけでなく、自分にとっても得難い友人の一人だ。
そして、千陽にとっても、いいオジサンの一人だ。
「おかえりなさい、朔哉。ちぃちゃん、眠そうねぇ? 偲月さん」
玄関で出迎えてくれた母は、偲月の胸に抱かれてウトウトしている千陽を見て、目を細める。
「結構な勢いで泣いたので。疲れたんだと思います」
「やっぱり、パパ見知りしたの?」
「はい。残念ながら……」
「それで、朔哉は浮かない表情をしているというわけね」
くすりと笑った母は、偲月から千陽を受け取ると、リビングの片隅に置かれたベビーベッドに横たえた。
もちろん、千陽は泣きわめいたりはせず、あっという間に眠りに落ちる。
自分だけが嫌がられているのだとダメ押しされて、ますます落ち込む。
「朔哉はショックでしょうけれど、毎日顔を合わせて、偲月さんと仲良くしている姿を見せれば、警戒心も薄れるわよ」
「……そうであることを願う」