意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「朔哉ぁ、ごはん出来たよー?」
「ですって。そんな仏頂面していないで、偲月さんの美味しいご飯を食べて来なさいな」
「……ああ」
キッチンのダイニングテーブルの上には、白米の上に鯛の切り身、海苔と三つ葉にわけぎを散らした大ぶりの茶碗が箸と共に用意されていた。
椅子に腰を下ろすと、偲月は急須からいい香りのする出汁を茶碗に注ぐ。
「かぶの浅漬けも食べる?」
「食べる」
温かい出汁がじんわりと胃に染みわたり、身が引き締まった鯛の歯ごたえ、三つ葉の爽やかな香りが食欲をそそる。
かぶの浅漬けは、塩と唐辛子以外の調味料も使っているらしく、甘酸っぱさもあり、箸が止まらない。
あっという間に平らげてしまった。
「おかわりいる?」
「いや。これくらいでちょうどいい」
空になった食器を下げた偲月は、適温で丁寧に淹れた緑茶を出してくれる。
食通ではないから、どんな風に美味しいかを語る語彙なんて持ち合わせていない。ただ、感謝の気持ちを月並みな言葉に込める。
「美味かった。ごちそうさま」
「お粗末様でした」
「母さんが、千陽の授乳をしてくれていたが、出かけるのは何時でもいいのか?」
時計の針は、もうすぐ八時を指そうとしている。
「うん、大丈夫。仮眠してからでもいいよ?」
「いや、一度寝ると朝まで起きられなくなる」
「じゃあ、千陽が完全に寝付くまで、朔哉がいなかった間に撮った写真見る?」
「見る」