意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「本日は、ご来店ありがとうございます。オーナーの京子です。こちらのシーナは、今夜デビューしたばかりなので、不慣れなこともあるかと思いますがどうぞよろしくお願いしますね?」
不穏な空気を感じ取ったのか、京子ママがすかさず挨拶し、わたしを紹介する。
(お、落ち着いて! 大丈夫、これだけ化粧が濃くて、見慣れない恰好をしていれば……気づかないかもしれないし? よく似た別人だと思わせれば……大丈夫……)
文字通り、口から心臓が飛び出そうなほどドキドキしているが、何とか笑みを取り繕い、初対面を装って挨拶した。
「こんばんはぁ、シーナですぅ。よろしくお願いしまーす」
「……ああ」
「福山さんと同じ、ロックでよろしいですか?」
「ああ」
生返事をした朔哉は、幻影を振り払うように軽く頭を振り、京子ママが作ったバーボンのロックを一息に空けた。
(き、気づかれて……ない?)
「おい、朔哉。不貞腐れるなって! 京子ママ、シーナちゃん。こいつ、朔哉はずーっと好きな女に片想いしているヘタレでね。ぜひ相談に乗ってやって?」
「片想い? イケメンなのに? 意外ですね」
「イケメンで、いつも言い寄られてばかりだから、自分から言い寄るのが苦手という、何ともムカつくヤツなんだ」
「でも、そこがカワイイという女性もいるでしょうね」
京子ママのフォローに、福山さんは首を振る。
「わかってもらえなきゃ、ただの冷たい男だよ。だからさ、片想い中の彼女に会わせてくれれば、俺が代わりに説明してやるって言ってるんだけどね。ほかの男に紹介するなんて、死んでもイヤだとか言っちゃって。自分のものでもないのに、独占欲出しまくり。束縛する男って、ダメでしょ。ね? シーナちゃん」
福山さんの言葉が、胸に突き刺さった。
朔哉が片想いしている相手は、知っている。
独占欲もあらわに、束縛したいと思っている相手が誰か、知っている。
ずっと前から。
それなのに、未だにその事実はわたしの胸をズタズタに引き裂く威力を持っている。
「でも……あんまり放っておかれるのも、寂しいんじゃないかと思います」
動揺を悟られないよう、必死に笑みを維持しながら言葉を返した。
「度を越した束縛は困るけれど、ちょっとくらい嫉妬されるのは嬉しいかも?」
「そうねぇ。そういう気持ちは、あるかもしれないわねぇ」
わたしの意見に京子ママも頷く。