子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 感情を押し殺した声が向けられると同時に、背中を壁に押し付けられた。

 勢いがよかったせいで肩が当たり、痛い。

 だけどそんなことを気にしている余裕はなかった。

 彼が再び私を見る。あんなに合わなかった視線が絡むと、逆に気恥ずかしくて私の方が彼を見つめられなくなった。

「保名さ――」

 短い沈黙に耐え兼ねて名前を呼ぼうとするも、彼が解いた手を私の手のひらに重ねてきて声を呑み込む。

 保名さんの大きい手はやっぱり熱くて、捕らえるように指を絡められた瞬間、心も囚われた。

 見つめられているだけで、手を握られているだけで、腰が砕けてへたり込みそうになる。

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