子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 そうならないのは、保名さんが私の両足の間に自身の膝を入れているせいだ。足を閉ざせないというだけのことが、こんなにも頼りない気持ちにさせられるとは知らなかった。

「そっちから仕掛けたくせに、不安そうな顔をするんだな」

 気付けば、保名さんの顔がとても近い場所にあった。

 少しでも動けば、きっと唇が触れてしまう。

「まさか、怖いのか?」

「こ……怖くない、です」

 震える声ながらも返事をしたのは、もう一歩だけ進んでみたいと願ったからだ。

 保名さんの吐息が私の唇の表面をなぞって、愛撫する。

 自分から動いてしまえばいいのに、彼の視線に縛られて身体が麻痺していた。

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