子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 鼓動があまりにも速くなりすぎて、彼に聞こえているのではないかと錯覚する。

 微かに保名さんが身じろぎしたのを感じ、その瞬間が訪れるのかもしれないと目を閉じた。

 だけど、私の望んでいたぬくもりは与えられなかった。

「……馬鹿馬鹿しい」

 ふっと手の拘束が緩み、保名さんの気配が遠ざかる。

「おまえの思い通りにはさせないからな。……カードは後でリビングのテーブルに置いておけよ」

 怒りと苛立ちの混ざった声で言い捨てると、保名さんは支えをなくして座り込んだ私を振り返ることなく、自室に向かった。

 ばたん、と乱暴に閉まるドアの音が私を冷静にさせてくれる。

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