子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 あのままキスをしてほしかったけれど、彼は私を拒んだのだ。

 なにを間違えてしまったのだろう。妻としての出迎えは、やはり望まれないものだったのか。

 いや、誘惑されてくれるかという問いかけがよくなかったのかもしれない。

 あの瞬間、彼はこれまでに一度も見せなかった表情をしたのだから。

 強い衝撃と、瞳に灯る激しい熱。

 私の迂闊なひと言が、彼のなにかしらの感情を揺さぶったのは想像に難くない。

 座ったまま、先ほど保名さんの吐息が触れた自身の唇に指を滑らせる。

 直接、彼のぬくもりを与えられたわけでもないのに、そこがじんじんと痺れて余計に鼓動が高鳴った。

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